私が働くのは総務課、会社によって任されている業務は異なるが、私の働く会社の総務課は他の部署から雑用係と言われている。
社用車の管理をするのも総務課の仕事、どの部署がどの社用車を何台使っているかは把握しており、車検や修理に出すのも総務課の仕事。
ある日、総務課のほうに、「オタクの車にぶつけられた」と苦情の電話があった。
苦情があっただけで非を認めるわけにはいかない、本当に該当する車両があるか調べてみると、1台該当した。
社用車を、どの部署が何台使っているかは総務課で分かるのだが、どの社員が利用したかまでは総務課では分からない。
ぶつけたとされる社用車を使っている部署に問い合わせると、該当する日に使っていたのは入社1年目のA君と判明。
A君を呼び出し何があったのかを聞いてみると、
A君、「ぶつけたかもと思ったのですが、車の流れが多い一方通行の道だったので停車することが出来ず、しばらくして現場に戻ると相手方はいなかった」
私、「事故の届けはした?」
A君、「相手方がいなかったので、ぶつけたのは気のせいかと思い届けてはいません」
A君と二人で当日乗っていた社用車を確認したのだが、ぶつけたと思われるところに傷やヘコミは確認できず。
保険屋さんに連絡をすると、「届けを怠ったのはマズイですね」。
こちらに落ち度があることが分かれば会社として対応しなくてはならない、相手方から再び私の元に電話が掛かってきたため、医師の診断書を出してくれるよう相手方に言ってみると、相手方は「まずはオタクが詫びに来るのが常識だろ!」。
相手方の話しぶりは、常識ある人間に思えなかったため、顧問弁護士に相談をすると、
弁護士さん、「被害者とされる相手方は、ぶつけられた届けを出していますか?」
私、「相手方も届けは出してないみたいです。届けを出したら、うちの会社が困るだろうから出さないでいると言っています」
弁護士さん、「相手方も届けを出してないなら、放っておけば良いです」
私、「大丈夫ですか放っておいて、会社のほうに怒鳴り込んでは来ませんか?」
弁護士さん、「そんなことにはなりません、映画の見過ぎですよ」
私は顧問弁護士の指示に従い相手方を放っておくと、相手方が会社に怒鳴り込んで来た、おいおい顧問弁護士、話が違うじゃないか!
私が相手方と対応をしている時に、部下が顧問弁護士に連絡、怒鳴り込まれ社内が騒然としているところに現れたのが、相手方の親分と思われるイカツイ男。
これはマズイ、うちの顧問弁護士はまだ来ないのかと思っていると、先程のイカツイ男が「遅くなりました、弁護士の〇〇です」。
それを見ていた総務課職員ならびに社員一同は、一斉にズッコケた。
本当にこのイカツイ男が弁護士なのだろうか?スーツには光るバッジが付いているが、本物のバッジなのだろうか?
イカツイ男が登場すると、怒鳴り込んで来た男は急に態度を変え、「診断書を持って来たら、弁償をしてくれますか?」と言葉使いも変わった。
どう答えて良いのか分からないでいると、イカツイ顧問弁護士は相手方に「ぶつけられた証拠を持って来てくれる」
相手方、「診断書で良いですか?」
イカツイ顧問弁護士、「診断書では誰がぶつけたかの証明にはならんぞ」
相手方、「どうすれば良いですか」
イカツイ顧問弁護士、「そんなの知るか、自分で考えろ」
相手方は言い掛かりと自覚しており、その後は何も言って来なくなった。
事故の届けを怠った社員は上司からの口頭注意だけで済み、イカツイ顧問弁護士は総務課で珈琲を飲んだだけで帰って行った。